先日、宮城県気仙沼市の方から一通のお手紙をいただきました。
内容はボランティアに参加された方々への感謝のお手紙。
この一枚の手紙を通して、随分と遠い記憶
いや、あれは僕にとっては衝撃だったとも言える記憶が蘇りました。
2011年3月11日
まだ記憶に新しい、東日本大震災が起こりました。
丁度その頃僕はアメリカ大陸を横断し、中米に飛ぶという北中米の旅に出ていました。
旅先で日本で起こる悲惨な状況、旅先で出会う世界各国の旅人から「日本は大丈夫か?」と心配される毎日で、何だか自分がこんなタイミングでバックパック背負って旅に出ているのがとっても情けなくて、頭を抱えて眠れない夜もしばしばありましたが、自分を責めて捻り出した答えは
「帰国したらすぐに被災地に向かう」
最後の旅路、キューバでの旅を終えて日本に帰国してきました。
帰国後に向かった先は宮城県、気仙沼市
とりあえず僕は何か役に立てないかと思い、現地のボランティアセンターで
ボランティアのお仕事を探すことにしました。
そしたらどうやら自衛隊の方々が瓦礫の中ら集めた結婚写真・家族写真、どこのご家庭にもある節目のお写真を1枚1枚洗浄するというボランティアがあるという話を知り、自分には音楽と写真くらいしか取り柄がないので、とりあえずその仕事をさせていただけないかとスタッフの方にお声をかけさせていただき、僕の写真人生を根本的に変える出来事に出会いました。
皆さん、ご存知でしょうか?
写真のインクというのは馬の脂でできているそうで、脂はバクテリアの大好物ゆえに
海水のバクテリアがかなり早い速度で写真を浸食していくそうです。
写真を1枚1枚丁寧に破けないように真水で海水を洗い落としていきます。
僕が自分の写真人生が根本的に変わったのは、まさにこの時。
この日まで芸術的なものばかり追いかけていたんです。できれば技術力が高くてカッコいい。
でも、違うんですね。
1枚1枚海水を洗い流して乾かしてゆく写真は、大半が家族と旅行に行った時の観光地の家族写真だとか、結婚式の思い出の写真、家に親戚が集まった時にみんなで撮ったような、どこの家庭にもあるような、まさに今で言えばiPhoneなんかで撮ったような、ありふれた写真ばかりでした。
洗っている場所から外を見れば、そのありふれた生活が津波による被害によって「失われた」という現実があり、自分は運良く地震と津波から「逃れれた」だけなのに、写真の持ち主の生存はまだ確認できていないという写真の世界と現実の世界の大きなギャップを行き来する狭間に自分が立ってみて、写真の中に写るものは、撮影技術や印刷の質とかそういったもの以上に
「人々の希望」
がシャッターが切られた「時」から「未来」へ向かって意味を見いだしていくものなんだなと、ボランティアを通じて考えさせられたことでした。
その後、僕はカメラマンとしてのキャリアを現在にかけて積んでいくのですが、本当にこの「写真洗浄」という経験がどんな難しい光の使い方やカメラの使い方よりも「カメラマン」として、あるいはまた「人」として、「日本人」として根本的なスタイルを形成する一つになったなと、気仙沼市の方々からボランティアのお礼のお手紙を頂戴して、目を通しながら、こっちが感謝しないといけないと、つくづく感じさせられます。
結婚式やライヴカメラマンにも同じことが言えるかもしれません。
技術力やセンス、またはカメラマンのルックスなどの
表面的なものだけでは語れない部分があります。
大切なことは「気持ち」であり、それは「心」
だからといって技術力とセンスを欠いては、人々から理解されるものを
世に発するのは難しく、精神論だけで押し進めて良いものではありません。
しかし僕は思います。
お金目当てだけのカメラマンが無難なテクニックで撮った1枚の写真よりも、結婚式で友達や親が泣きながら撮ったぶれぶれの画質の悪い安いコンパクトデジカメやiPhoneで撮った写真の方がよっぽど感情的で優しくて、受け継がれていくものだと思います。
極論かもしれませんが、ライヴ写真なんかはファンのお客さんが撮ったものが一番美しいとさえ思うんです。
それでも、これだけ世の中にカメラマンが沢山いて、誰の携帯電話にもカメラが付いていて、
一眼レフカメラなんて誰でも買って、ある程度綺麗に撮れる時代に結婚式やミュージシャンが
命賭けで辿り着いた重要な節目に
「マサヒロに撮ってほしい」
「寺川くんに撮ってもらいたい」
とご依頼をいただき、撮影という「出会い」を共にできることが、本当に嬉しいです。
Photographer Masahiro Terakawa.
本記事の結婚写真の撮影と執筆
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MS PHOTOGRAPHY主宰。大阪・関西を活動拠点に日本全国40都道府県で前撮り・フォトウェディング・結婚写真の撮影を行っています。写真歴17年。現在はフォトスタジオの企画プロデュース・父・夫として仕事に家事育児と奮闘中!
ウェディングカメラマン寺川昌宏の紹介
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